※この記事では、左足が長く両股関節内旋した呼吸器系が弱い鼠径ヘルニアの方について書いています。
これまでに、当院では鼠径ヘルニアを患っている数名の方の股関節転位を診させていただきました。
鼠径ヘルニアは中高年の男性に多い病気でみなさんご年配の男性の方でしたが、この時期を除いて当院は基本的に女性専用で、それまでは鼠径ヘルニアの方がいらした事が殆どなく、鼠径ヘルニアの再発や悪化を恐れてらっしゃるご状況の中で、はじめから股関節的にベストな対処が出来たとは言えませんでした。
しかし、この少ない施術経験から、この病気について価値ある知見を得ることができましたので、それをここで共有することで少しでも鼠径ヘルニア(及びヘルニア)の方々の助けになれればと思います。
鼠径ヘルニアの方に共通していた股関節転位
私は、鼠径ヘルニアを患っている方の股関節を一人、二人、三人と診て行く中にみなさんが同じ股関節転位のタイプであるという事実に気がつきました。
股関節転位とは股関節が正常な角度からずれて戻らなくなる事で、骨盤の前後左右の不均衡を生み、ひいては全身にゆがみをもたらしている根本原因で、体質や姿勢などの大元になっているものです。
大きく分けると6種類のタイプがあるのですが、これが三者三様ではなく、みなさん同じ型の股関節転位だったのです。
そして、この股関節の型は、鼠径ヘルニアの方の常態である内臓下垂、腹圧(腹腔圧力)が最もかかってくる転位タイプであったので、これは鼠径ヘルニアになりやすいひとつの典型的な股関節のパターンだと推察しました。
鼠径ヘルニアは骨格のゆがみが関係する病気ですが、大人の場合、自然に治ることはないという前提の元に手術が行われます。
確かに、骨格のゆがみを根本的に正す事ができなければ、他のあらゆる疾患や症状と同じように鼠径ヘルニアも快善さすことは難しい事でしょう。
しかし股関節矯正では骨格を、骨盤をゆがませている大元から根本的に整えるため、鼠径ヘルニアになりやすい状態である内臓下垂や下腹部にかかる腹圧を快善さすことができるのです。
当然ながら、鼠径ヘルニアの方が、他の転位タイプであるケースもあることでしょうが、ここでは、自身の経験から鼠径ヘルニアとの関係性が深いと思われる股関節のタイプとその矯正法についても少し書いてみたいと思います。
①左足が長い
左足が右足より外旋すると仮性延長といって長くなるのですが、鼠径ヘルニアを患っていた方々はみなさん左足が長かったのです。そして内臓下垂と冷えの症状を訴えられました。
内臓下垂と鼠径ヘルニア(脱腸)
左足が長くなると体質が陰性になり、内臓(消化器系・生殖器系・泌尿器系)の機能が低下、代謝が落ちて冷え、骨格のゆがみと陰陽の分離から、これら腹腔内にある内臓が下垂します。
鼠径ヘルニアは、鼠径部から腸などの内臓を包んでいる袋(腹膜)がとび出してしまい、内臓がお腹の中から出たり入ったりしてしまう病気ですが、鼠径部には睾丸と繋がる血管や精管、子宮へと繋がる靭帯を内包する鼠径管が通っています。
更に、他の部分より皮膚構造が薄く、生殖機能と繋がるこの構造的に弱い部分から、主に腸などの内臓が腹圧で押し出されとび出す形になるので、いわゆる脱腸と呼ばれています。
このように、鼠径ヘルニアとは便秘症の人や前立腺肥大の人など、内臓機能の弱い左足が長い人がなりやすい病気なのです。
②両股関節共に内旋
又、いらした方々はどなたも、両股関節共に極度に内旋し、骨盤の前傾が際立っていました。骨盤の前傾、いわゆる反り腰ですね。
両股関節共に内旋し、骨盤がこのように前傾して腰が反ると上に続く脊柱も反って前彎し、そのままだと後ろに反り返ってバランスが悪いので、重心を下に降ろして立つようになります。
両股関節が内旋した人は、必ず、重心が下・体の前側に来て腹圧(腹腔内圧)がかかるようになり、内旋した両股関節と鼠径部のあたりに力をかけて立つようになります。
恐らく、この方々の例のように鼠径ヘルニアの方には、この両股関節内旋が多いのだろうと思います。何故なら、両股関節内旋が生み出す骨盤の前傾が、最も、腹圧が高まる股関節のタイプだからです。
重心がどのように移動し腹圧が高まるのか、その体感は誰でも簡単に確かめることが出来ます。
それでは、骨盤が前傾・後傾する足形をそれぞれにとって、重心がどのように移動するのか、腹圧がどのようにかかり、またはかからなくなるのか、実際に確かめて見ましょう!
(両足先を極度に内側に向けて立つ)→両股関節が内旋して骨盤が前傾する→重心は落ちてお腹側に来るようになります。
(両足先を極度に外側に向けて立つ)→両股関節が外旋して骨盤が後傾する→重心は背中側に上がるようになります。
男性の骨盤前傾
又、男性の骨盤前傾の場合は、腹圧のかかり方、鼠径部あたりにかかる緊張が、より強くなると思われます。
骨盤は生理機能の違いから男性と女性とで作りが違い、大まかに言うと、男性の骨盤は縦型(りんご)、女性の骨盤は横広がり(かぼちゃ)になっています。
通常、男性はりんご型の骨盤を支えるために、足を開いて(外転)足先を外に向けて(外旋)立ち、女性はかぼちゃ型の骨盤を支えるため足先を内に向けて(内旋)立ちやすい傾向にあります。
より安定感のある立ち方をするためですが、これが、男性で両股関節内旋で骨盤が前傾しますと、お腹が過度に前につきでた格好になり、このような状態で、内臓下垂し腹圧がより高まると思われます。
男性の鼠径管は、女性よりも幅が広くなっている(胎児期に内臓である睾丸を体外に出すために使われた通り道)ため、内臓がとび出しやすいという事実があるのですが、
左足が長く、男性でありながら両股関節内旋という要素が加わった時、この鼠径ヘルニアという病気が、より発症しやすくなると思われます。
③呼吸器系が弱い
更に、鼠径ヘルニアの方々は共通して呼吸器系の症状を訴えられました。咳をよくされる方もいましたが、この鼠径ヘルニアという病気は、咳をして腹圧がかかるとよけいに発症しやすくなります。
本来、礒谷理論(礒谷公義氏が創始された礒谷式力学療法)では、呼吸器系の異常は右足の長い人に出るとされますが、陰陽の分離が過度になると、症状が左右で混交します。
人間の体を体癖でみる野口整体では、呼吸器系に障害のでる陰性な人を六種と分類します。
奇数癖は陽性、偶数癖は陰性なので六種体癖は陰性になります。股関節転位から見てみると、偶数体癖を最も強く持っている人は左足が長く、六種体癖も左足が長いためそのしわよせが呼吸器系に来ている状態ですから、脚長差を縮めることで、六種体癖の症状である声枯れ、息の苦しさ、咳などの呼吸器系症状が良くなっていきます。
そして、こちらにいらしたこの鼠径ヘルニアの方々は、例外なく六種体癖を強く持っていて、ペンデュラムで測定した時、呼吸器系を司る第五チャクラが正常に働いていませんでした。
上で書いたように、左足が長く呼吸器系が弱い方というのは、磯谷式力学療法でも股関節的に重症とされる混合型ですが、脚長差を揃えていけば、大体誰でも、息苦しさなどの症状は次第に楽になって呼吸が深くなっていきます。
つまり、この左足が長い鼠径ヘルニアの方々がおしなべて訴えられた呼吸器系の症状も、股関節矯正の観点から言えば、左足が長いゆえに悪化している状態である事は明白なのです。
鼠径ヘルニアの方の股関節の矯正
それでは、この左足が長い両股関節内旋の矯正についてですが、通常は脚長差を縮めることを優先させて矯正をしていきます。
しかし、鼠径ヘルニアの方の場合には、腹圧のかかる骨盤の前傾姿勢という状態の緩和も重要なので、脚の長さを揃えると同時に、この骨盤の前傾を生んでいる両股関節内旋を共に矯正していくことが、とても重要です。
これは、言ってみれば、どちらの足も外側へ開くということです。
例えば、左足が長い人は右足に比重をかけて立つため、通常は右半身から症状が出ます。腹圧も右側にかかるようになるため右側からヘルニアが出やすいと思われます。
施術を受けられた三名の方の内、一人の方は両側、二人の方は右側に鼠径ヘルニアがでていました。
鼠径ヘルニアが右側に出ている場合、脚長差を縮める事で、この右にかかっていた比重が左にも少しずつ移動します。この時、腹圧も左に移動していくので、矯正を行う時には注意が必要です。
脚長差を縮めると同時に、両股関節共に開かなければなりません。
しかし、取りあえずは、両股関節が内旋していることが間違いないと確信できるなら、足先を外側に向けて立ち、歩行すると、骨盤の前傾が快善され下腹部にかかっていた腹圧が多少は減少します。
自己整体
股関節矯正スクワット
このような重篤な症状を抱えて自己整体で股関節の矯正を行う場合には、自己整体や屈伸運動などを行うのも難しいので、股関節を矯正するスクワットを用いるのが最善でしょう。
このスクワットはスクワットといっても、例え歩けなくなった人も行えるようなもので体力をあまり要しないものです。しかしその効果は絶大なものがあり、定期的に施術に通えない方や股関節疾患の方などにお教えしていたものです。
このスクワットでは、脚長差、骨盤の前傾、後傾をも矯正することができるため、最小限の矯正を行って様子を見て検証して矯正を続けていきます。
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